神戸港で二人、歩くだけの午後が思いのほか良かった話

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神戸港って、歩くのにちょうどいい。

別に何か目的があったわけじゃない。ただ「散歩でもする?」って誘われて、じゃあどこ行こうかってなって、なんとなく海の方がいいかなって思っただけ。車を停めたのは確か昼過ぎで、太陽が真上よりちょっと西に傾きかけてた頃。風が吹いてて、最初は「ちょっと寒いかも」って思ったんだけど、歩き始めたらそうでもなかった。海風って不思議で、冷たいはずなのに顔に当たると気持ちいい。塩っぽい匂いがして、ああ海だなって実感する。

彼女が「あそこのベンチ座ろうか」って言ったから座ったんだけど、そこから見える景色が妙に良くて。別に特別な何かがあるわけじゃないのに、船がゆっくり動いてるのを見てるだけで時間が過ぎていく。話してたのは他愛もないことばかり。コンビニで買った缶コーヒーを二人で飲んで、「これ甘すぎない?」「そう?」みたいなやりとりをして。

そういえば前に一度、神戸に来たことがあったんだよね。大学生の頃で、友達と夜景を見に来たんだけど、結局道に迷って全然違う場所にたどり着いて、コンビニで地図アプリと格闘してた記憶しかない。あの時は必死だったけど、今思えばあれはあれで楽しかったのかもしれない。

港沿いをずっと歩いてると、カモメの声が聞こえてくる。あいつら、本当にうるさい。でもそのうるささも含めて、なんか港っぽくていいなって思う。彼女が突然「お腹空いた」って言い出して、近くにあったカフェに入った。「マリンサイドカフェ」って名前で、いかにも観光客向けって感じの店だったけど、窓際の席に座れたからまあいいかって。

注文したのはパスタとサンドイッチ。味は普通だったけど、窓の外に海が見えるだけでなんとなく美味しく感じる。人間って単純だなって思った。彼女がスマホで写真を撮ろうとしてたから、「インスタにあげるの?」って聞いたら「ううん、ただ撮りたいだけ」って。そういう感覚、わかる気がする。

食べ終わってまた歩き始めたら、さっきより風が強くなってた気がした。髪が乱れるのを気にしてる彼女を見ながら、こういう時間って贅沢だよなって思う。何もしてないのに、なんか満たされてる感じ。

遠くに見えるクレーンとか、停泊してる大きな船とか、そういうのを眺めながらぼんやり歩く。時々すれ違う人たちも、みんな同じようにのんびりしてる。ジョギングしてる人もいれば、犬の散歩してる人もいて、それぞれが自分のペースで港を楽しんでる。

「疲れた?」って聞かれて、「全然」って答えたけど、実は少しだけ疲れてた。でも心地いい疲れ方だから、もうちょっと歩きたいなって思った。防波堤の先まで行ってみようかって話になって、そこまで歩いた。先端に着いたら、さっきよりもっと海が近くて、波の音がはっきり聞こえた。

彼女が「また来たいね」って言ったから、「うん」とだけ答えた。特別な場所じゃないかもしれないけど、こうやって二人で歩くにはちょうどいい場所だと思う。帰り道、夕日が少しずつ沈み始めてて、空がオレンジ色に染まってた。

駐車場に戻る頃には、もうすっかり日が傾いてて、街灯がぽつぽつと灯り始めてた。車に乗り込んで、エンジンをかける。「楽しかった」って彼女が言って、僕も「うん」って答えた。

たぶんまた来ると思う。いつかわからないけど。

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