
須磨海岸って、夏以外に行ったことある?
私が初めてここを訪れたのは8月の昼下がりで、正直なところ「神戸で海水浴」っていうイメージがあんまりなかったから、どんなもんかなって半信半疑だった。電車を降りて改札を抜けると、もうそこから潮の匂いがする。ああ、本当に海が近いんだなって実感する瞬間。駅から歩いて数分で砂浜に出られるアクセスの良さは、正直びっくりした。都会の喧騒からこんなにすぐ抜け出せるなんて、ちょっとズルいくらい。
夏の須磨は、まあ想像通りの賑わいっていうか。家族連れ、若いグループ、カップル。浮き輪を抱えた子どもたちの声が砂浜に響いて、パラソルの下でスマホをいじってる人もいれば、波打ち際で騒いでる大学生もいる。海の家の焼きそばの匂いと日焼け止めの甘ったるい香りが混ざって、夏だなあって思う。私も友達と来て、波に足だけつけて「冷たっ!」とか言いながらはしゃいだ記憶がある。泳ぐ気満々で来たのに、結局ちゃんと泳いだのは30分くらいで、あとはずっと砂浜でだらだら喋ってた。
でも本当に好きなのは、夏が終わったあとの須磨なんだよね。
9月の終わりとか、10月に入ってから。人がぐっと減って、砂浜を歩いても誰ともすれ違わない時間帯がある。朝の7時くらいに行くと、波の音しか聞こえない。たまに犬の散歩をしてる人とか、ジョギングしてる人がいるくらい。砂はまだ夏の名残で柔らかくて、裸足で歩くとひんやりしてて気持ちいい。海の香りも夏とは違う。なんていうか、もっと生々しいっていうか、潮と藻の匂いが強くなる感じ。
そういえば前に、冬の須磨に行ったことがある。1月の平日、午後3時くらい。あれは寒かった。海風がやたら冷たくて、コートを着てても震えるくらい。でも不思議と人が全然いなくて、砂浜をひとりで歩いてると、なんか世界の端っこに来たみたいな気分になる。波の音が妙に大きく聞こえて、たまにカモメが鳴く。あの静けさは、夏の賑わいとは真逆で、ある意味贅沢だった。ただ、途中でコンビニコーヒー買って飲もうと思ったら、冷たい風のせいですぐ冷めちゃって、「あったかい飲み物にすればよかった…」って後悔したけど。
須磨の砂浜って、よく見ると意外と広い。海岸線に沿ってずっと歩けるから、散歩コースとしては最高なんだよね。私はよく須磨海浜公園のあたりから西に向かって歩く。途中で防波堤があったり、小さな岩場があったりして、景色が単調にならない。春先には、砂浜に小さな貝殻が打ち上げられてることもあって、なんとなく拾ってみたりする。別にコレクションしてるわけじゃないんだけど、綺麗な形のやつを見つけるとつい手に取っちゃう。
夕方の須磨もいい。
夏なら夕日が海に沈む瞬間を見られるし、秋冬は空が茜色に染まる時間が早い。人が少ない季節だと、その景色を独り占めできる。波が砂浜に寄せては返す音を聞きながら、ぼーっと海を眺めてると、なんか色々どうでもよくなってくる。仕事のこととか、明日の予定とか、全部忘れて、ただそこにいるだけでいい気がしてくる。
神戸って、おしゃれなカフェとか異人館とか、そういうイメージが強いけど、須磨海岸みたいな場所があるのも面白い。観光地っぽくなくて、地元の人が普通に生活の中で使ってる感じがする。夏は思いっきり遊んで、それ以外の季節は静かに散歩する。そういう使い分けができる場所って、案外少ない。
最近は、須磨に行くとき特に目的を決めないようにしてる。ただ歩くだけ。時間があれば海の家跡地のベンチに座ってみたり、砂浜に寝転んでみたり。何も考えず、ただそこにいる。それだけで十分っていうか。
まあ、たまには夏の賑やかな須磨も悪くないけどね。


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