神戸・元町の高架下で、何も買わずに歩いた午後

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元町の高架下って、なんであんなに落ち着くんだろう。

友達が「ちょっと付き合って」って言うから、昼過ぎに三宮で待ち合わせて、そのまま元町まで歩いた。目的地があったわけじゃない。ただ「高架下ぶらぶらしよ」って、それだけ。正直、最初は「え、高架下?」って思ったけど、行ってみたら意外と悪くなかった。というか、むしろ良かった。

高架下商店街に入ると、急に空気が変わる。日差しが遮られて薄暗くて、ひんやりしてる。夏場は特にこの温度差が気持ちいい。古い看板が並んでて、喫茶店とか靴の修理屋とか、一体いつからやってるんだろうって店ばかり。観光地っぽくない、生活の匂いがする場所。

「これ見て」って友達が指差したのは、手書きの「本日休業」の張り紙だった。達筆すぎて読めない。二人で「これ何て書いてあるの?」って笑いながら通り過ぎた。

そういえば去年、別の友達とここ来たときに迷子になったんだよね。高架下って、似たような風景が続くから、どこ歩いてるのか分からなくなる。スマホの地図見ても「今ここ」のピンが微妙にずれてて、結局勘で歩いた。あのときは焦ったけど、今思えばそれも含めて楽しかったのかも…だけど。

途中、小さな公園があった。

公園って言っても、ベンチが三つと、錆びた滑り台があるだけの、本当に小さなスペース。でも誰もいなくて、静かで、なんとなくそこに座った。友達は自販機でコーヒー買ってきて、私はさっきコンビニで買ったお茶を開けた。特に話すこともなく、ただぼーっと座ってた。

高架の上を電車が通るたびに、ゴトンゴトンって音が響く。最初はうるさいかなって思ったけど、慣れてくるとそれがリズムみたいに感じられて、むしろ心地よかった。風が吹くと、どこかから揚げ物の匂いがしてきて、お腹が鳴った。恥ずかしかったけど、友達も「私も」って笑ってた。

「何も買ってないね、私たち」って友達が言った。確かに。高架下商店街って、見てるだけで満足しちゃう不思議な場所なんだよね。別に買い物したいわけじゃないのに、店の前で足が止まる。ショーウィンドウに並んでる、誰が買うんだろうって思うような靴とか、レトロなデザインのバッグとか。

ある店の前で、友達が「これ、うちのおばあちゃんが持ってたやつに似てる」ってポツリと言った。私は何も言わずに頷いた。

公園を出て、また歩き始めた。目的地はまだない。というか、多分このまま適当に歩いて、疲れたらどこかでご飯食べて帰るんだろうなって、なんとなく分かってた。それでいいと思ってた。

高架下の照明って、オレンジ色っぽくて、夕方みたいな雰囲気がずっと続く。時間の感覚が曖昧になる感じ。実際は午後三時くらいだったはずなのに、もっと遅い時間みたいに感じた。

「ねえ、あそこ行ってみよ」って友達が指差した先には、「モトマチ珈琲倶楽部」って看板が見えた。入ったことない店。でも入ってみたら、意外と新しくて綺麗で、ちょっと拍子抜けした。外観と中身が全然違う。神戸ってそういう店多い気がする。

結局そこでケーキセット頼んで、また無駄に長居した。友達は仕事の愚痴を言い始めて、私は適当に相槌打ちながら、窓の外を眺めてた。高架下を行き交う人たちは、みんなどこに向かってるんだろう。

帰り道、また同じ高架下を通った。来たときと逆方向に歩いてるはずなのに、風景がほとんど変わらない。それがなんだか面白くて、「私たち、ループしてるんじゃない?」って言ったら、友達は「それ怖いからやめて」って笑ってた。

駅に着いたとき、友達が「今日、何したっけ?」って聞いてきた。考えてみたら、本当に何もしてない。歩いただけ。でもそれが妙に満足感があって、「また来ようね」って言ったら、「うん」って返事が返ってきた。

元町の高架下は、多分これからも変わらずそこにあって、私たちが思い出したときにまたぶらぶら歩ける場所なんだと思う。それ以上でも以下でもなく…ただそれだけ。

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