神戸港の海風に誘われて、二人だけの休日散歩

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週末の朝、少し早起きして神戸港へ向かった。いつもより少し丁寧に身支度を整えて、待ち合わせ場所のメリケンパークへ。彼女はすでに到着していて、海を眺めながら静かに立っていた。潮の香りを含んだ海風が、彼女の髪をふわりと揺らしている。その横顔を見て、今日という日が特別なものになる予感がした。

「おはよう」と声をかけると、彼女は振り返って微笑んだ。その笑顔に、朝の光がキラキラと反射して眩しい。「おはよう。いい天気だね」と彼女。本当にそうだった。雲ひとつない青空が広がり、穏やかな波が岸壁に優しく打ち寄せている。こんな日にデートできるなんて、運がいい。

神戸港の遊歩道をゆっくりと歩き始めた。急ぐ必要なんてどこにもない。二人で過ごすこの時間そのものが、目的地のようなものだから。海風が心地よく頬を撫でていく。少し塩気を帯びたその風は、都会の喧騒を忘れさせてくれる魔法のようだ。

ポートタワーの赤い姿が、青空を背景に凛と立っている。何度見ても美しいと思う。「写真撮ろうか」と提案すると、彼女は少し照れくさそうに頷いた。スマートフォンを構えて、二人で並んでシャッターを切る。後で見返したら、きっと今日の気持ちまで思い出せるだろう。

遊歩道沿いのベンチに腰を下ろして、しばらく海を眺めた。大型客船が静かに停泊していて、その白い船体が朝日を受けて輝いている。「あの船、どこから来たんだろうね」と彼女が呟く。「さあ、でもきっと遠い国からだよ」と答えながら、見知らぬ土地への憧れを感じた。いつか二人で、あんな船に乗って旅に出られたらいいな。

海風がまた吹いてきて、彼女が少し肩を寄せてくる。自然な仕草だったけれど、心臓が少し早く打った。こういう何気ない瞬間が、実は一番幸せなのかもしれない。特別なイベントや高価なプレゼントよりも、ただ隣にいてくれることの尊さを感じる。

ベンチを立って、さらに港沿いを歩いた。カモメたちが空を舞い、時折水面に降りては何かをついばんでいる。彼らの自由な姿を見ていると、日常の些細な悩みなんて小さく思えてくる。神戸港という開放的な空間が、心まで広くしてくれるようだ。

ハーバーランドの方へ足を向けると、少しずつ人通りが増えてきた。休日を楽しむ家族連れやカップル、友人同士のグループ。みんなそれぞれの時間を過ごしている。私たちもその中の一組として、この街の景色に溶け込んでいく。

「お腹空かない?」と彼女が聞いてきた。時計を見ると、もう昼前だった。「じゃあ、あそこのカフェに入ろうか」と、海が見えるテラス席のあるお店を指さす。二人でテーブルに着いて、窓の外に広がる神戸港を眺めながらランチを注文した。

運ばれてきたパスタとサラダを分け合いながら、他愛のない話をする。仕事のこと、最近見た映画のこと、次はどこへ行きたいか。話題は尽きることがない。彼女の話し方、笑い方、考え方。すべてが愛おしく思える。デートを重ねるたびに、新しい一面を発見できることが嬉しい。

食事を終えて再び外へ出ると、海風が少し強くなっていた。でもそれは不快なものではなく、むしろ爽快感をもたらしてくれる。「もう少し歩こうか」と提案すると、彼女は笑顔で頷いた。まだ帰りたくない気持ちは、お互い同じらしい。

モザイクの観覧車がゆっくりと回っている。「乗ってみる?」と聞くと、「いいね」と即答。チケットを買って、ゴンドラに乗り込んだ。扉が閉まり、ゆっくりと上昇していく。眼下に広がる神戸港の全景が、息を呑むほど美しい。

一番高いところで、ゴンドラが少しの間止まった。360度に広がるパノラマ。海、山、街並み。神戸という街の魅力が一望できる。「きれいだね」と彼女が呟く。「うん、本当に」と答えながら、景色だけでなく、隣にいる彼女の存在も含めて、すべてが美しいと感じていた。

観覧車を降りて、帰り道を歩く。夕方が近づき、空の色が少しずつ変わり始めている。海風は相変わらず優しく吹いていて、一日の終わりを告げているようだった。「今日は楽しかった」と彼女が言う。「僕も。またこうして散歩しようね」と答えた。

駅まで歩きながら、今日一日を振り返る。特別なことは何もなかった。ただ神戸港を歩いて、海風を感じて、二人で時間を過ごしただけ。でもそれが何より贅沢で、かけがえのない時間だったと思う。こんなデートをこれからも重ねていけたら、それだけで幸せだ。

改札の前で「また来週」と手を振る。彼女の後ろ姿を見送りながら、次のデートが待ち遠しくなった。神戸港の海風と、二人で過ごした穏やかな時間。その記憶を胸に、また明日からの日常へ戻っていく。

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