神戸港の海風に吹かれながら、二人でただ歩いた日のこと

Uncategorized

ALT

神戸港って、なんであんなに歩きやすいんだろうね。

あの日は確か10月の終わり頃で、まだコートを着るには早いけど長袖一枚じゃちょっと肌寒い、そんな微妙な季節だった。待ち合わせは三宮駅で、そこから海の方へ向かって歩き始めたんだけど、特に目的地を決めてたわけじゃない。「散歩でもする?」って聞かれて「うん」って答えただけ。デートっていうほど気取ったものでもなくて、ただ二人で歩きたかっただけ。

メリケンパークに着いた頃には、もう午後の光が海面をキラキラさせてて。あの独特の潮の匂いと、どこかから漂ってくるコーヒーの香りが混ざって、なんとも言えない港町の空気が漂ってる。観光客らしき人たちがポートタワーの前で写真を撮ってて、その横を通り過ぎながら「あれ一回も登ったことないんだよね」って言ったら、「え、マジで?」って驚かれた。地元の人間ほど観光名所に行かないっていう、あるあるだよね。

海沿いの遊歩道を歩いてると、ベンチに座ってる老夫婦がいて。二人とも黙って海を見てるだけなんだけど、その空気感がすごく良くて、なんか羨ましくなった。

ハーバーランドの方まで歩いていくと、急に人が増えてきて、週末だからか家族連れやカップルでごった返してる。モザイクの前を通りかかったとき、「お腹空いた?」って聞かれたんだけど、そういえば昼ご飯食べてなかったことに気づいた。でも座って食べるよりも、まだ歩いていたい気分だったから、「もうちょっと歩こうよ」って答えて、そのまま西の方へ進んでいった。途中で小さなクレープ屋さんを見つけて、そこで買ったバナナチョコクレープを二人で半分こしながら歩く。クレープの甘い匂いと海風が妙にマッチして、これはこれでアリだなって思った。

ここで全然関係ない話なんだけど、私、昔この辺りで財布落としたことがあって。学生の頃、友達と遊びに来てて、帰りの電車賃がないことに気づいて真っ青になったんだよね。結局、交番に届けられてて無事に戻ってきたんだけど、あのときの焦りは今でも覚えてる。神戸の人って優しいなって、そのとき初めて思った。

波止場の方まで来ると、もう夕方の気配が漂い始めてて、空がオレンジ色に染まりかけてた。海を行き交う船の汽笛が遠くで鳴って、カモメが低く飛んでいく。風が少し強くなって、髪が顔にかかるのを手で払いながら、「寒くない?」って聞かれたけど、全然寒くなかった。むしろ心地よかった。この海風の感じ、潮っぽくて少しだけ生臭いんだけど、嫌いじゃない。

神戸港って不思議な場所で、観光地なのに生活感もあって、外国船が停泊してるかと思えば地元の漁船も並んでて、なんかごちゃ混ぜな感じがいい。整理されすぎてないというか、完璧じゃないところが逆に落ち着く。そういえば、向こうに見える倉庫群、昔は「カワサキウェアハウス」っていう名前のカフェがあったらしいんだけど、もうないんだよね。行ってみたかったな。

ベンチを見つけて、二人で座った。目の前には広がる海と、遠くに見える明石海峡大橋のシルエット。

「ずっとこうしてられたらいいのにね」って言われて、「そうだね」って答えたけど、本当にそう思った。特別なことなんて何もない、ただ歩いて、海を見て、風に吹かれて、たまに他愛もない話をして。それだけなのに、なんでこんなに満たされた気持ちになるんだろう。

帰りの電車の中で、窓の外を流れる夜景をぼんやり眺めながら、今日歩いた距離のことを考えてた。何キロくらい歩いたんだろう。でも、疲れてなかった。足は少し痛かったけど、心は軽かった。

神戸港の散歩、また行きたいな。次は冬がいいかも。もっと寒い日に、手をつないで歩けたら…なんて。

コメント

タイトルとURLをコピーしました