「ねえねえ、次どこ行く?」と、スマホ片手にマップを確認するアヤが声を上げた。JR三ノ宮駅から歩き始めて約10分、私たち5人のグループは神戸の観光スポットとして名高い北野坂の入口に立っていた。緩やかな坂道の両脇には洋風のカフェやブティックが立ち並び、どこか異国情緒が漂っている。
「まずは坂を登りながら、雰囲気を楽しもうよ!」とリーダー格のタクヤが提案する。私たちは期待に胸を膨らませながら、石畳の続く北野坂をゆっくりと歩き始めた。神戸の街並みは東京や大阪とはまったく違う、どこかヨーロッパの小都市を思わせる優雅さがある。坂道を登るにつれて、視界が開けていき、神戸の街と海が一望できるようになってくる。
「あ、見て見て!あれが異人館だよね?」と、いつも元気なユウタが指差した先には、赤いレンガと白い窓枠が美しい洋館が見えた。明治時代から大正時代にかけて、外国人居留地として栄えた神戸北野エリアには、当時の面影を残す異人館が今も数多く残されている。それぞれの建物が独自の歴史と物語を持ち、訪れる人々を異国の世界へと誘ってくれるのだ。
「うわあ、本当にタイムスリップしたみたい!」と、写真好きのミサキがさっそくカメラを構えた。私たちは最初の目的地である「うろこの家」へと向かった。うろこ状の外壁が特徴的なこの異人館は、北野エリアで最初に公開された洋館として知られている。チケットを購入して中に入ると、アンティークな家具や調度品が当時のままに展示されており、まるで映画のセットの中に迷い込んだような不思議な感覚に包まれた。
「この椅子、めっちゃ高そう…」「昔の外国人ってこんな生活してたんだ」「この食器、今でも使えそうじゃない?」と、みんなそれぞれに感想を口にしながら館内を見学していく。特に2階からの眺望は素晴らしく、神戸の街並みと港が一望できる。海風が心地よく、しばらくみんなでバルコニーに立ち尽くしていた。
次に向かったのは「風見鶏の館」だ。その名の通り、屋根の上に風見鶏が立つこの建物は、北野異人館街のシンボル的存在である。赤レンガの外観が印象的で、多くの観光客が記念撮影をしている。「ここ、インスタ映えするよね!」とアヤがポーズを決めると、私たちも次々とカメラの前に並んだ。若者らしく、ちょっとふざけたポーズや、真面目な表情など、いろいろなバリエーションで撮影を楽しんだ。
館内に入ると、ドイツ人貿易商の住居だったというこの建物には、重厚な家具や美しいステンドグラスが配されていた。「なんか、ハリーポッターの世界みたい」とユウタが興奮気味に言う。確かに、西洋の古い屋敷特有の雰囲気が漂っており、ファンタジーの世界に入り込んだような気分になる。
お昼時になり、私たちは北野坂沿いのカフェでランチをすることにした。テラス席から北野の街並みを眺めながら、神戸牛を使ったハンバーグやパスタを堪能する。「神戸に来たら、やっぱり神戸牛だよね!」「このパン、めっちゃ美味しい!」と、食事の時間も会話が弾む。観光で歩き回った後の食事は格別で、みんな満足そうな表情を浮かべていた。
午後は「萌黄の館」や「ラインの館」など、さらにいくつかの異人館を巡った。それぞれの建物が異なる国の建築様式を取り入れており、見飽きることがない。「こっちはイギリス風、あっちはフランス風って感じ?」「建物ごとに全然雰囲気違うね」と、建築に詳しくない私たちでも、その違いを楽しむことができた。
特に印象的だったのは、ある異人館の庭園だった。手入れの行き届いた西洋風の庭には季節の花が咲き誇り、噴水の水音が心地よく響いていた。「ここでお茶会とかしたら最高だろうな」とミサキがつぶやく。確かに、この優雅な空間でゆっくり時間を過ごすのも贅沢だろう。
夕方近くになり、私たちは再び北野坂を下り始めた。登ってきた時とは違い、下りながら見る景色もまた格別だった。坂の下には神戸の街が広がり、その向こうには海が輝いている。「神戸って、本当に素敵な街だね」とアヤがしみじみと言った。みんなも同じ気持ちだったようで、静かにうなずいた。
「次は夜景を見に来たいな」「クリスマスシーズンとかイルミネーションきれいそう」「今度は神戸の他のエリアも回ってみたい」と、早くも次回の計画を立て始める私たち。一日の観光を通じて、神戸の魅力をたっぷりと感じることができた。
三ノ宮駅に戻る頃には、みんな心地よい疲労感に包まれていた。「今日は本当に楽しかったね」「写真いっぱい撮れた!」「また絶対来ようね」と、口々に感想を述べ合う。異人館という歴史的建造物を通じて、神戸の文化や歴史に触れることができた一日は、私たち若者にとっても新鮮で刺激的な体験だった。
北野坂と異人館街は、若者グループでも十分に楽しめる観光スポットだ。歴史や建築に興味がなくても、フォトジェニックな建物や美しい景色、おしゃれなカフェなど、楽しめる要素がたくさんある。友達とワイワイ言いながら坂道を歩き、異国情緒あふれる建物を見学し、美味しい食事を楽しむ。そんなシンプルだけど充実した時間が、神戸の北野エリアでは過ごせるのだ。次の週末、あなたも友達を誘って神戸へ出かけてみてはいかがだろうか。きっと素敵な思い出が作れるはずだ。
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