神戸の水族館で見た、子供たちが本気で笑う瞬間

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あの日、須磨の水族館で子供たちの笑い声が響き渡っていた。

私が神戸須磨水族館に足を運んだのは、たしか3月の終わりごろ。春休みに入ったばかりで、館内は家族連れでごった返していた。入り口をくぐった瞬間、ひんやりとした空気と独特の磯の匂いが混ざり合って、なんだか懐かしい気持ちになったのを覚えている。チケット売り場の列に並びながら、前にいた小学生くらいの男の子が「イルカ見たい!」って何度も叫んでいて、お母さんが「わかったわかった」って苦笑いしてた。

子供って、水族館に来ると本当に変わる。普段は静かな子でも、大きな水槽の前に立った途端、目をキラキラさせて走り出す。私が見たのは、ペンギンのコーナーで立ち止まっていた姉弟だった。お姉ちゃんの方は5歳くらいかな、弟は3歳に満たないくらい。二人ともガラスに顔を押し付けて、ペンギンが泳ぐ姿を追いかけていた。「見て見て! こっち来た!」って姉が叫ぶと、弟も「きたー!」って両手を広げて飛び跳ねる。その後ろでお父さんがスマホを構えているんだけど、子供たちが動き回りすぎて全然撮れてない様子で。

あれ、ちょっと話逸れるけど、私が子供の頃って水族館でビデオカメラ持ってる親が多かったんだよね。あの肩に担ぐタイプの、やたらデカいやつ。今思うとよく持ち歩いてたなって。

イワシの群れが泳ぐ大水槽の前では、もっとすごい光景が広がっていた。10人以上の子供たちが、まるで指揮者みたいに手を動かして、魚の動きに合わせて体を揺らしている。キラキラ光る銀色の魚たちが一斉に方向を変えると、子供たちも「わあー!」って歓声を上げる。その中に、車椅子に乗った女の子がいて、お母さんが抱き上げて水槽の近くまで連れて行ってあげていた。女の子は手を伸ばして、ガラス越しに魚に触れようとしていた。届くわけないのに、何度も何度も。

午後2時を過ぎたあたりだったと思う。イルカショーの時間が近づいて、みんながプールサイドの観客席に集まり始めた。

私も空いてる席を探して座ったんだけど、隣に座ってきたのが4人家族。双子らしき男の子二人と、両親。男の子たちは黄色と青のレインコートを着ていて、「濡れるかな濡れるかな」って興奮しきっていた。ショーが始まると、イルカがジャンプするたびに「すごーい!」「もっかい!」って叫んでいて、その声が他の子供たちにも伝染していく。水しぶきが飛んできた時なんて、もう大騒ぎ。濡れるのが嫌で逃げる子もいれば、わざと前に出ていく子もいる。双子の片方は思いっきり水をかぶって、それが嬉しかったみたいで満面の笑みを浮かべていた。

タッチプールのコーナーでは、また違った表情が見られた。ヒトデやナマコに触れるコーナーなんだけど、ここでは子供たちが急に慎重になる。「触っていいの?」「痛くない?」って、さっきまでの勢いはどこへやら。係員のお姉さんが「大丈夫だよ、優しく触ってね」って声をかけると、恐る恐る手を伸ばす。触った瞬間の「うわっ!」って反応、それから「なにこれ、ぷにぷにしてる!」って笑顔になる流れが、見ていて飽きなかった。一人の女の子がヒトデを持ち上げようとして、係員さんに「そっと触るだけにしてね」って注意されてたけど。

閉館時間が近づいてきて、出口に向かう家族連れの流れができていた。疲れて眠そうな顔の子供もいれば、お土産コーナーで「これ買って!」ってねだっている子もいる。私が見た男の子は、ぬいぐるみのイルカを抱きしめながら、「また来たい」って何度もお母さんに言っていた。

帰り道、駅まで歩きながら考えていた。子供たちにとって、あの水族館で過ごした数時間は、どんな意味を持つんだろうって。きっとすぐに忘れちゃう子もいるだろうし、ずっと覚えている子もいるだろう。でも、あの瞬間の笑顔だけは本物だった。計算も打算もない、純粋な喜び。

神戸の海沿いを電車が走っていく。窓の外の景色を眺めながら、私もまた来ようかな、なんて思ったりして。

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