神戸の水族館で子供が走り回る音を聞いていると、なんだか自分も許されている気がしてくる

Uncategorized

ALT

須磨の水族館に行くと、必ず誰かの子供が奇声を上げている。

あれは確か去年の秋だったと思うんだけど、平日の昼過ぎに神戸須磨水族館を訪れたことがあって。その日は妙に空いていて、大水槽の前にしゃがみ込んで、ぼんやりイワシの群れを眺めていたら、突然後ろから「ギャアアアア!」って声が聞こえて心臓が止まるかと思った。振り返ると3歳くらいの男の子が、エイを指差しながら全身で喜びを表現していて、母親らしき人が「声、声!」って慌てて口を押さえようとしてるんだけど、子供の興奮は止まらない。その光景を見ていたら、なんだか笑えてきちゃって。

水族館って不思議な場所で、普段なら「静かにしなさい」って言われるような場所なのに、子供が多少騒いでも誰も本気で怒らないんだよね。美術館だったら完全にアウトなのに、水槽の前だと許される。あの青白い照明と、水の音と、ガラス越しに泳ぐ生き物たちが作り出す空間が、なんとなく「ここでは少しくらいはしゃいでもいいよ」って言ってくれている気がする。

家族連れが多い週末の午後なんて、もう賑やかなんてもんじゃない。イルカショーの時間が近づくと、ベンチに座っているお父さんたちが子供を肩車して、みんな同じ方向に移動していく様子は、なんだか渡り鳥の群れみたいだなって思う。子供たちは水しぶきがかかる最前列を目指して走るし、「危ないよ!」って追いかける親の声が響き渡るし、その合間に赤ちゃんの泣き声も混ざってくる。カオスなんだけど、嫌な感じがしない。むしろあの喧騒の中にいると、自分も何か大切なものの一部になれている気がして、ちょっと安心する。

ペンギンのコーナーで立ち止まっていた時のことなんだけど。

隣にいた5歳くらいの女の子が、ガラスにぴったり顔をくっつけて「ねえねえ、あのペンギンさん、お腹すいてるのかな?」ってお母さんに聞いていて。お母さんは「さっきご飯食べたから大丈夫よ」って答えてたんだけど、女の子は納得いかない様子で「でも寂しそうな顔してる」って言うの。ペンギンの表情なんて正直よくわからないんだけど、子供にはそう見えるんだろうなって。そういえば自分も小さい頃、動物園のキリンが「帰りたそうにしてる」って泣いたことがあったな。親はめちゃくちゃ困ってた。

神戸の水族館は2024年にリニューアルして、以前とはだいぶ雰囲気が変わったらしいんだけど、変わらないものもあって。それは子供たちが本気で驚いて、本気で笑って、本気で質問してくる、あの純粋な反応なんだと思う。クラゲの水槽の前で「ふわふわ〜」って言いながら手を動かしている子とか、タッチプールでヒトデを触って「ザラザラする!」って大声で報告している子とか。大人になると忘れちゃうんだよね、初めて何かに触れた時のあの感覚を。

そういえば「アクアリウム・カフェ・ブルーノ」っていう、水族館の近くにある喫茶店に入ったことがあるんだけど、そこでも親子連れがいっぱいいて。疲れた顔の母親がアイスコーヒーを飲みながら、テーブルの下で靴を脱いでいるのが見えた。子供は隣でお絵描きセットを広げて、さっき見たイルカの絵を描いている。その絵がまた、どう見てもイルカに見えないんだけど、本人は満足そうで。ああいう時間って、当事者にとっては疲れるだけかもしれないけど、後から思い出すと宝物になるんだろうな。

水族館の出口に向かう頃には、たいてい子供たちはぐったりしている。抱っこをせがむ子、ベビーカーで寝ている子、それでも「また来たい!」って叫んでいる子。入口であんなにはしゃいでいたエネルギーはどこへ行ったのかってくらい、みんな静かになっている。親たちも疲れた顔をしているけど、どこか満足そうで。

あの幸せそうな風景を見ていると、自分にはまだ子供もいないし、これから持つかどうかもわからないけど、ちょっとだけ未来が楽しみになる。水族館の青い光の中で走り回る子供たちの姿が、なんだか希望みたいに見えて…。

まあ、次に行く時もきっと誰かの子供の奇声で驚くんだろうけど。

コメント

タイトルとURLをコピーしました