神戸の水族館で子どもが見せた、あの顔

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朝の10時過ぎに着いたら、もう駐車場が半分埋まってた。

須磨の水族館って何年ぶりだろう。自分が子どもの頃に来た記憶はあるんだけど、正直ほとんど覚えてない。覚えてるのは、ペンギンの前でソフトクリームを落として泣いたことくらい。あの日は確か夏休みの終わりで、やたら暑かった気がする。

入口を抜けると、すぐに家族連れの波に飲まれる。ベビーカーを押す父親、手を繋いだ兄妹、おじいちゃんに肩車されてる小さな子。みんな同じ方向に歩いてるのに、なぜか誰ともぶつからない不思議な流れ。水族館の中って独特の空気があって、外の光が遮られてるせいか、時間の感覚が曖昧になる。薄暗い通路に青い光が揺れてて、どこからか水の音が聞こえてくる。

最初の大水槽の前で、ある家族が立ち止まってた。お母さんが「ほら、マグロだよ」って指差してるんだけど、3歳くらいの女の子は全然違う方を見てる。彼女が見つめてるのは、水槽の底をゆっくり這ってるエイ。「ママ、あれ飛んでる」って言うから、お母さんも最初は「?」って顔してたけど、すぐに「ほんとだ、空飛んでるみたいだね」って笑った。

子どもの観察眼って、大人が見落としてるものを拾うんだよね。

クラゲのコーナーに入ると、照明がピンクとか紫に変わって、急に幻想的な空間になる。ここで5歳くらいの男の子が「宇宙だ!」って叫んでた。確かに、暗闇に浮かぶクラゲの透明な傘は、星雲みたいに見えなくもない。その子のお父さんが「これ、毒あるんだぞ」って教えてたけど、男の子は「かっこいい!」って目を輝かせてる。毒があるからかっこいい、っていう価値観。子どもの論理ってシンプルで好き。

タッチプールのエリアは、もう戦場だった。ヒトデとかナマコを触れるコーナーなんだけど、子どもたちが殺到してて、係員のお姉さんが「順番にね〜」って声を枯らしてる。ここで見た光景が忘れられなくて。小学校低学年くらいの男の子が、やっとの思いでナマコに触ったんだけど、その瞬間「ぎゃー!」って手を引っ込めて、でも次の瞬間にはまた触ろうとしてる。怖いけど触りたい、触ったら怖い、でもまた触りたい。その繰り返し。周りの子たちも笑ってたし、お母さんもスマホで動画撮ってた。

そういえば、昼過ぎにイルカショーを見たんだけど。

プールサイドの最前列に座ってた家族がいて、イルカがジャンプするたびに水しぶきがバシャーンってかかるわけ。お父さんとお母さんは「うわー!」って避けてるのに、真ん中に座ってる女の子だけは両手を広げて水を浴びてる。びしょ濡れになりながら、ずっと笑ってた。ショーが終わった後、その子の髪の毛から水が滴ってて、Tシャツも半透明になってたけど、本人は全然気にしてない。「もう一回見たい!」ってお父さんの手を引っ張ってた。

ペンギンの水槽の前は、いつ行っても人だかりができてる。何がそんなに魅力的なのか、大人になると分からなくなるけど、子どもたちはずっと見てられるらしい。双子みたいな姉妹が、ガラスにべったり顔をくっつけて「あっちのペンギン、こっち見てる!」「こっちのペンギンも!」って会話してた。実際にはペンギンは別に誰も見てないんだけど、そういう細かいことはどうでもいいんだろうな。

帰り際、出口近くのベンチで休んでたら、隣に座ってた親子の会話が聞こえてきた。「今日、何が一番楽しかった?」ってお母さんが聞いて、息子が「全部!」って即答してた。お母さんは「全部じゃなくて、一個選んで」って言うんだけど、息子は「だって全部楽しかったもん」って譲らない。最終的にお母さんが折れて、「そっか、全部だね」って笑ってた。

駐車場に戻る頃には、もう夕方の4時を回ってて、入場待ちの列はなくなってた。車に乗り込む家族の姿があちこちに見えて、疲れた顔の親と、まだ興奮してる子どもたちの対比が面白い。

あの水族館で見た子どもたちの顔、あれが全てだったのかもしれない。計算とか、効率とか、コスパとか、そういうの全部抜きにして、ただ目の前のものを面白がる力。大人はいつ、あれを手放したんだろうね。

帰りの車の中で、ふとそんなことを考えてた。

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