
北野坂を登り始めた瞬間、誰かが「え、坂きつくない?」って言った。
友達4人で神戸に来たのは金曜の昼過ぎで、三宮の駅前でたこ焼き食べてから「異人館行こうぜ」ってノリで歩き出したんだけど、正直みんな異人館が何なのかよくわかってなかった。私も「なんか洋館があるんでしょ」くらいの認識で、観光地だからインスタ映えするかなって思っただけ。坂道を登りながら、すでに太ももが悲鳴をあげてる。運動不足が露呈する瞬間って、いつも唐突にやってくるよね。
登り始めて5分くらいで、最初の異人館が見えてきた。うろこの家っていう、壁が魚の鱗みたいな模様になってる建物。「うわ、マジで洋館じゃん」って誰かが言って、みんなでスマホ構えて写真撮りまくった。入場料がかかるって知って一瞬ひるんだけど、せっかく来たしってことでチケット買って中に入る。中は思ったより薄暗くて、古い家具の匂いがした。木のきしむ音とか、階段を上る時の足音が妙に響いて、なんていうか、タイムスリップしたみたいな感覚になる。窓から見える神戸の街並みがきれいで、「ここに住んでた人、毎日この景色見てたのかな」なんて思った。
そういえば去年、大学のゼミ旅行で京都行った時も似たようなこと思ったんだよね。古い建物見ると、昔の人の生活を想像しちゃう癖がある。でもあの時は雨降ってて、靴の中までびしょ濡れになって風邪ひいたんだった。今日は快晴でよかった。
坂をさらに登っていくと、いろんな異人館が点在してて、どれも個性的。風見鶏の館は赤レンガで重厚感があって、萌黄の館は淡い緑色の外壁が可愛らしい。友達のユウタが「なんでこんなに洋館あるの?」って聞いてきたから、スマホで調べたら、明治時代に外国人がたくさん住んでたエリアだったらしい。「へー、神戸ってそういう歴史あったんだ」ってみんなで納得した。正直、神戸って港町でオシャレなイメージしかなくて、こういう歴史的背景まで考えたことなかった。
途中でカフェに入った。北野坂の途中にある小さな店で、名前は「カフェ・ド・ノール」だったかな。テラス席に座って、みんなでアイスコーヒー飲みながら休憩。10月の終わり頃だったから、風が少し冷たくて気持ちよかった。隣のテーブルには外国人観光客のカップルがいて、英語で何か話してる。そういう光景を見ると、「あ、ここって国際的な街なんだな」って実感する。
異人館って、正直入る前は「古い建物見るだけでしょ」って思ってたんだけど、実際に歩いてみると面白い。それぞれの館に個性があって、飾ってある家具とか調度品が全然違う。あと、建物の中を歩いてると、床のきしむ音とか、窓から差し込む光の角度とか、そういう細かいところに目がいくようになる。観光地を「見る」っていうより、「体感する」感じ。
一番印象に残ったのは、ラインの館っていう白い建物。ここは入場無料で、中に入ると展示室みたいになってた。北野異人館街の歴史を説明するパネルとか、当時の写真とかが展示されてて、さっきまでなんとなく見てた建物の背景が少しずつ見えてくる。友達のアヤが「こういうの読むと、ただの観光じゃなくなるよね」って言ってて、確かにって思った。
坂を登りきったあたりで、みんな疲れてきた。「もう帰ろうか」って声も出始めたけど、せっかくだからって展望スペースまで行くことに。そこから見下ろす神戸の街は、さっき異人館の窓から見たのとはまた違う景色で、港まで見渡せる。海が光ってて、ビルが立ち並んでて、「神戸ってこんなに広いんだ」って改めて思った。
帰り道、坂を下りながら「結局、異人館って何が良かったの?」ってユウタが聞いてきた。みんな考え込んじゃって、しばらく黙ってたんだけど、アヤが「なんか、いつもと違う時間の流れ方した気がする」って言った。それ、すごくわかる。普段の生活って、スマホ見て、授業出て、バイト行って、みたいな繰り返しじゃん。でも今日は、古い建物の中をゆっくり歩いて、歴史に触れて、景色を眺めて…なんていうか、時間の使い方が贅沢だった。
三宮の駅に戻ってきたのは夕方で、街は通勤帰りの人でごった返してた。さっきまでいた北野坂の静けさとのギャップがすごい。「また来る?」って誰かが聞いたけど、誰も答えなかった。
来るかもしれないし、来ないかもしれない。でも今日歩いた坂道のこと、たぶん忘れない…と思う。

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